二つの世界の物語・愛(AI)
原作 木所隼人
プロローグ
宇宙にはさまざまな形の時空間が存在する。
我々が住む肉体生命世界、そして機械生命世界。
この二つの世界は本来別の時空系にあり、交わることはない。
しかし、今、この二つの世界が重なり合い衝突しそうになっていた。
もしこのまま二つの世界の時空が重なったら、両方の世界が消滅してしまう。
未知の“大いなる力”はどちらかの世界を消滅させ、片方を救うことを決めた。
そのため、それぞれの世界から二人ずつの代表を選び、戦わせ、勝った方を存続させることにした。
第一章 目覚め
アヤはある日、交通事故に遭った。
「私は死ぬのか……」
アヤの意識が遠のいていった。
しかし目覚めると、アヤは大きな神殿の中にいた。
「わたし……生きてる……？」
彼女は身体中傷だらけであちこち血がにじんでいた。
痛みで立ち上がることもままならなかった。
どこからともなく声が聞こえた。
「お前は選ばれた。神殿の中にある泉に身を浸せ」
「ここはどこなの？あなたはだれ？」
アヤの質問には答えが返ってこない。
意味がわからなかったが、声の主の言われるままに衣服を脱ぎ、泉に身を浸した。
泉には不思議な力があり、事故で傷ついた体は一瞬で治り、痛みは消え去った。
さらに身体中に力がみなぎるのを感じた。
「神殿を出てあの丘の向こうまで行け。そこにお前の仲間がいる」
言われる通りにするしかない。
丘の向こうで、アヤはユリという17歳の少女と出会った。
ユリもまた事故に遭い、気がつけばこの世界にいたのだった。
そしてユリも同じ泉に身を浸し、力を得ていた。
第二章 戦いの始まり
二人が状況を理解しようとしていると、未知の“大いなる力”から説明があった。
この亜空間で、それぞれの世界の存続をかけて戦うことを命じられた。
「意味がわからない！」
「なぜ戦わなければならないの？」
あいかわらず質問に答えは返ってこない。
そして
「すでに戦いは始まっているぞ」
そう言われた瞬間、ミサイルが飛来し、二人は別々の方向に吹き飛ばされた。
アヤとユリは離れ離れになり、それぞれの敵と対峙することになった。
第三章 ユリ対シータ
アヤとはぐれたユリは一人で何日もジャングルの中をさまよった。
密林の湿気が彼女の体にまとわりつき、汗が流れ落ちる。
疲労と不安が募る中、彼女はシータと名乗る敵と出会った。
シータはアヤにそっくりな機械生命人間だった。
彼女の冷たい金属の体はメタリックな輝きを放ち、日差しを反射してきらめいている。
さらに無機質な冷たい目でユリを見つめていた。
「あなたが相手か。肉体生命の限界を見せてやろう。」
シータの声はまるで感情を帯びていなかった。
ユリは剣を構えた。
ユリの父は剣道道場の師範だった。
ユリは子どもの頃から父から剣道を教えられており、剣での戦いには自信があった。
シータも剣を構えた。
がそれはレーザーのビームサーベルで、ユリの鋼鉄製の剣とは全く質が違うものだった。
「大丈夫。剣の見切りができれば恐れることはないわ」
剣のぶつかり合う音が響き渡り、火花が散る。
ユリが攻撃を仕掛けるが、シータの動きは速く、力強かった。
焦ったユリは力任せに剣を振ると、後方の岩に剣を叩きつけることになってしまった。
鈍い音と共にユリの剣は折れてしまった。
「しまった！」
しかし彼女は諦めなかった。
「ここで負けるわけにはいかない」
ユリはシータに突進し、タックルを仕掛け、取っ組み合いになった。
馬乗りになったユリは予備のナイフを抜き、シータの胸に突き刺した。
シータの体がショートし、目から光が消えた。
それでも
「ま、まだ……」
まだシータはユリに向かってきた。
ユリはナイフでシータの首を切り落とした。
ユリは傷だらけになりながら、かろうじて勝利した。
「お前の勝ちだ。だが、お前では……オーラには勝てない……」
そういってシータは息絶えた。
ユリ対オーラ
数時間後、ユリは今度はオーラと遭遇した。
オーラはユリにそっくりな機械生命人間だった。
彼女もまた金属製の体だったが、その形態は戦闘に特化したものだった。
「シータの仇を討たせてもらうわ」
その目は怒りで燃えていた。
“機械生命“は我々の知ってる機械とは違い、そこには明らかに生命としての感情があった。
戦闘が始まるとオーラは距離をとり、レーザービームで攻撃してきた。
「まるで自分の分身と戦っているようね…」
光の速さで放たれるビームは、ユリの周囲の木々を焼き尽くした。
ユリも不慣れな銃で応戦するが、レーザービームとの射程距離の違いに苦しんだ。
「この銃では勝てない。得意の接近戦に持ち込まないと…」
ユリは巧みに動きながら、オーラとの距離を詰めた。
しかし、オーラの攻撃は止むことなく続いた。
そこへ銃声を聞いたアヤが駆けつけた。
何日かぶりにやっとユリと会えたが、彼女はオーラとの激しい戦いの最中だった。
「私も戦わないと。ユリだけに任せておけない」
しかし、恐怖で足がすくんで動けなかった。
アヤは影から二人の戦いを見ているだけだった。
ユリは徐々に距離を詰め、ついに得意の接近戦に持ち込むことに成功した。
彼女は相手の背後に回った。
そしてユリのナイフはオーラの首に刺さろうとした。
「勝った！」
しかしその瞬間、ユリに一瞬の隙ができた。
ユリはオーラに胸を撃ち抜かれていた。
ユリの体が倒れ、血が流れ出た。
オーラが勝利した。
「ユリーーーー」
アヤは自分を責めた。
「私が勇気を出して戦いに参加していたら…」
第五章 アヤとオーラ最終決戦
アヤは未知の“大いなる力”に、この戦いは不公平だと訴えた。
「機械生命体のオーラは自由に空を飛べるが、私は飛べない。空を飛べる道具を用意して欲しい」
未知の“大いなる力”はアヤの申し出を受け入れ、一人乗り用の変形飛行機を与えた。
この飛行機は、通常の飛行と戦闘には「ライトフライヤー」と呼ばれる飛行機のフォーム。
さらに戦闘に特化したアヤと飛行機を一体化する“ライトアーマー”フォームに変形する仕様だった。
「これなら互角に戦える」
アヤはライトフライヤーに乗り、オーラとの空中戦を繰り広げた。
オーラはミサイルを次々と発射し、アヤはそれをかわしながら反撃する。
戦いは熾烈を極め、アヤはライトアーマーに変形して接近戦にもちこんだ。
「これで終わりにする！」
アヤはライトアーマーの力を最大限に引き出し、オーラの攻撃をかわしながら、隙を突いてオーラのコアに攻撃を仕掛けた。
オーラは反撃しようとするが、アヤの動きは速く、オーラの攻撃をかわし続けた。
「ユリのためにも、負けるわけにはいかない！」
アヤはライトアーマーの全火力を放ち、オーラのコアに致命的なダメージを与えた。
オーラは爆発し、粉々になった。
アヤは勝利を収めた。
空中から地上に降り立ったアヤは、勝利の喜びよりも深い喪失感を感じた。
ユリの死と、この戦いの重さが彼女の心に重くのしかかった。
そしてユリはそのまま意識を失ってしまった。
エピローグ
気がつくとアヤは地球に帰っていた。
アヤは戦いの記憶を振り返った。
「あれは夢だったのか。そんなはずはない。私は勝ったのか、それとも…」
